風月ベーカリー

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国立劇場で行われた11月歌舞伎公演を観てきました。

前日にインターネットで取った際は、パラパラとポツン一人席しか残っていなかったのですが、いざ劇場に行ってみると、案外空いている席も多く、何だか不思議な感じ。

とはいえ、休日の公演ということもあってか、弁当は一瞬にして売り切れ、食堂もあっという間に満席(そのお客様たちはどこにいたのだろう)。ほうほうのていで残りわずかなサンドイッチを手にして、やっとこさ食事にありつけた次第。やっぱ国立劇場は、何でもいいから弁当持参で行かんとなぁ。

今日の演目は、「日本振袖始」「曽根崎心中」の2本。国立劇場は、今秋から来春にかけて、45周年記念と銘打って月毎に一人の戯作者をフィーチャーして、それにちなんだ演目を上演しているのですが、11月は近松門左衛門。おかげさまで、どっちも初めての舞台を見ることができました。

「日本振袖始」は、時代物の1本。「出雲国簸の川川岸桜狩の場」「出雲国簸の川川上の場」の二幕構成。本来は全五段構成で、現在では五段目の大蛇退治の場のみ上演されることが多いそうですが、今回は一~四段をまとめて補綴されたものを序幕に差し入れて上演されています。素戔嗚尊を梅玉、稲田姫を梅丸、侍女くまざさを松江、足摩乳を東蔵、岩長姫実は八岐の大蛇を魁春。

たくさん見てるわけではありませんが、私はどうにも近松門左衛門の時代物はなんかあんまり得意ではなく。ただ、これはこれまで見た時代物の中ではわりにすんなり観られたな、という感想です。補綴されているためストーリーが整理されていて観やすかったのがひとつ、たまたま、つい最近古事記を読み返したばっかりだったのも、とっつきやすかった理由のひとつなのかもしれません。

いわゆるザ歌舞伎的な見ごたえあるシーンも多いのですが、ただ、古典の趣が強いので、中盤眠気を誘うところもところどころあり。周囲を見回すと隣の老夫婦も前にいる外国人の女性三人連れも撃沈しており、少し安堵した私なのでした。そんな中、印象的だったのは、稲田姫を演じた梅丸丈の可憐な美貌。すごくかわいかったです。

もう1本は今日のお目当ての「曽根崎心中」。「生玉神社境内の場」「北新地天満屋の場」「曽根崎の森の場」の三幕構成。天満屋お初に藤十郎、平野屋手代徳兵衛に翫雀、油屋九平次に亀鶴、平野屋主人久右衛門に竹三郎。

今でいうところの純愛ものってことなんでしょうねぇ。みんないい人ばっかりなのに(九平次以外)、金のせいでうまくいかない。比較的現代劇に近い演出がされており(それが昔からそういう演出なのかはわかりませんが)、ぐいぐいテンポよく心中まで進み、中だるみなしで一気に観たな…という感想。

なんつうても、皆さんおっしゃる通り、藤十郎のお初がものすごく、ホントに若い娘(ただの若い娘ではなくて、恋する若い娘)にしか見えないところが、芸の力というか、怖さというか、まぁホントにすごかったです。

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