おむすび権米衛

2018-04-26 12.10.59

四月大歌舞伎の昼の回に行ってきました。この日は千穐楽だったので、平日といえども結構混んでるのかしら…と思ったら、意外といい感じに全体的に隙間があって、快適に観劇できたという意味では結構な感じでした。両隣ともびっしり人がいるっていうのは結構しんどいものでして、今日くらいの隙間があると狭い三階席もつらくないし、トイレも売店も、ロビーにあるベンチにも、気楽に行けていいな。劇場からすると、もちろん大入りのほうがいいに決まっているでしょうが、私からすると、人が少ない空間はありがたいばっかり。

演目は、「西郷と勝」と、「裏表先代萩」の通し。「西郷と勝」はもちろん大河ドラマにかこつけて…という部分があるんでしょうけど、だったら、「西郷と豚姫」もやってくれればいいのに、と思った。錦之助の勝海舟はすごくよかったが、しかし、やはり、一番良いところで寝てしまった。どうも、真山青果をきちんと全部見るのは難しい。

「裏表先代萩」とは通称で、本当の題名は「梅照葉錦伊達織」(河竹黙阿弥)というのですが、時代物の名作「伽羅先代萩」(奈河亀輔)を下敷きに作った「桜舞台幕伊達染」(四世鶴屋南北)というお芝居を書き換えたものだそうです。つまり、「伽羅先代萩」→「桜舞台幕伊達染」→「梅照葉錦伊達織」ってこと。「伽羅先代萩」はコテコテの時代物ですが、「桜舞台幕伊達染」は、小助という小悪党を登場させ、「先代萩」のストーリーの合間に、小助を主役としたサイドストーリーを挟むことで、時代物と世話物を交互に見せる構成になっています。こういう構成のお芝居を歌舞伎では「テレコ」といい、「互い違いにすること」「あべこべ」という意味なんだそうです。だから「裏表」ってつくわけです。表は時代で、裏は世話。

なんでこんな複雑な構成にするんや…と思いましたが、実際に見ると、面白い。そもそも「伽羅先代萩」の話って結構重いので見るほうもそれなりに覚悟が要りますが、今回は世話から始まるので、アハハと笑えるのが、個人的にはうれしい。しかも、この幕(大場道益宅)がとってもおもしろかった。大場道益をやっていた團蔵さん、最高。最終的には、妾に来てもらいたい人にはフラれるし、殺されるし、お金取られちゃうんですけど。で、この後、おなじみの「御殿」「床下」で、そのあともう一度世話で「小助対決」、最後にまた時代で「仁木刃傷」でシメ。気楽にみられる世話物に、重厚感のある時代物、荒事も少々、江戸時代版の法廷シーンまであって、色々盛りだくさん。まさにエンタメやなぁという感じで面白かったです。そうそう、最後の幕の「仁木刃傷」で、最後大望を遂げた渡辺外記左衛門(東蔵)が息も絶え絶えに舞を舞うシーンがあるんですが、いつもそこが腑に落ちないのですが、今回も微妙に不思議な気分だった。なぜ死にかけているのに舞わねばならんのだろう。舞っている外記を見て、細川勝元(錦之助)が「めでたいのうー」というのが、どうも納得いかない。ちゃんと通しでストーリーを把握しとかないとダメなんだろうなぁ。

ところで、もともと「桜舞台幕伊達染」が作られたのは、三代目菊五郎が、四世南北に「おれも、仁木弾正をやりたい。世話で」と言ったのがきっかけらしいので、仁木弾正と小助は二役なのは当然として、その上で、政岡か八汐を含めた三役で演るのがお約束のようです(今回、菊五郎さんは仁木弾正と小助の二役。政岡は時蔵、八汐は彌十郎)。まさしく悪の華ともいえる仁木弾正と、愛嬌はあるけどケチな小者の小助を同じ人間が演じるところが面白さのひとつなんでしょうが、よく考えたらこの構成、夜の回の「絵本合法衢」と同じやん。で、南北で伊達騒動をテーマにしたお芝居といえば「慙紅葉汗顔見勢(伊達の十役)」のほうが有名ですが、こっちのほうが先に書かれたもののようです。伊達騒動そのものがどれだけ客受けするネタだったかともいえますが、今も昔も庶民はスキャンダル好きってことなんでしょうかね。

ということで、今日のお昼は、おむすび権米衛の玄米おにぎり、豚味噌入り玄米おにぎり、鶏の唐揚げ。幕間が3回あったので、ちんまりと食べました。

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