カテゴリー別アーカイブ: 歌舞伎の日

タルタルのり弁

国立劇場の6月歌舞伎鑑賞教室に行ってきました。演目は「神霊矢口渡」の[頓兵衛住家の場]。今回は、5段構成の4段目にあたるところだけ上演されますが、お芝居の前にそれまでのあらすじを簡単に説明してくれるので、特に問題なく見られました。

壱太郎がお舟、頓兵衛が鴈治郎。最後の人形ぶりも立派で、1幕仕立てなのに盛りだくさんという印象です。歌舞伎では大抵、悪者の身内は最後にモドリがありますが、このお話は頓兵衛は最後まで性悪極悪人のままで、それはそれで清々しい。最後はお舟ちゃんも死んじゃうので悲しい話なんですが、あんまりしんみりさせないのが、江戸の人(平賀源内)が書いたお話ならではなのかなぁ、という気もしました。

お芝居前の「歌舞伎の見方」は虎之介。洋楽をかけながら奈落から登場という演出にちょいと驚きましたが、解説内容はごくごくオーソドックス。若干内輪ウケっぽい感じにまとめちゃったのが、少しもったいなかったかな。メインのお客様は、一般的な高校生と仮定して、もっとド初心者に振り切った解説をすればいいのに、と思います。特に、今日の1階席は、高校生でほぼ満席(4校ほど来ていた)でしたし。

お弁当を持参するほどの上演時間でもなかったんですが、終わってから食べるのも中途半端だったので、オリジン弁当でタルタルのり弁を調達して、上演前にさっと食べてしまう。のり弁の上に、白身フライ、ちくわ天、ゴボウのきんぴらが乗った、定番のパターン。やっぱり、のり弁といえば、この組み合わせが鉄板な気がする。あと、キューちゃん漬けが添えてあったら最高。

帰宅して、一元屋のきんつばと最中で一息。国立劇場は年に数回行くけれど、芝居を見たらすぐ帰るから、周辺のお店なんてほとんど知らず、きんつばのおいしいこの店も、ようやく最近知った次第。

初めて食べたんですけど、ここのきんつば、すごくおいしいです。皮が薄くて、いい感じに塩気があって、それとあんこのバランスがすごい。最中もおいしかったです(きんつばは、うっかり撮影忘れ)。何年も半蔵門に行っているのに知らなかったなんて、もったいないことをしたなぁ。

お弁当

團菊祭五月大歌舞伎の夜の回を見に行きました。夜の回の一番の見どころは、やっぱり、丑之助のご披露狂言となる「絵本牛若丸」でしょう。他の方の劇評を見ていたら、「じいじ2人がデレデレしているのを愛でる舞台」とあって、吉右衛門さんはわかるけど菊五郎さんもデレデレしてるのかなと思ったら、思っていた以上にデレって感じだった。ふたりとも、孫の背中を眺めながらニコニコしていて、それを見られただけでもよかったなぁという舞台。それにしても、名家の御曹司の祝福されっぷり感が本当にすごいです。これから、10年、20年、30年と続けていくはじめの一歩に立ち会っているのだと思うと、不思議な気持ちにもなります。

もうひとつ楽しみだったのが、キリの「御所五郎蔵」。そもそもそんなに好きな話ではないだけど、五郎蔵が松也で五月が梅枝と、好きな役者さんなので、楽しく見ました。松也さんも梅枝さんもなんといっても声がいい。聞いていて気持ちがよくなるような伸びやかな声で、いつ聞いてもほれぼれする。歌舞伎では「金に困って…」という話は多いのだけど、金に振り回される話はやっぱり切ないのよね…。

お弁当は例によって残り物を詰めるだけ。青ネギたっぷりの玉子焼き、にんじんと松の実のキャロットラペふう、ズッキーニと豚ヒレで作ったハムとゆで蕎麦の実をゆかりで和えたサラダ。

蕎麦の実、食べた後も眠くならなくて、すごくいい。味も好き。

丑之助ご披露の祝い幕の絵は、宮崎駿(3階席からだときれいに取れなかったので、2階席から撮影)。予定にない弁慶の絵まで描いてきたので、お芝居にも弁慶を登場させざるを得なかった(もともとの台本には弁慶はいなかったそうな)というエピソードは、ちょっとクスッとしてしまう。でも、引き込みの時の弁慶と牛若丸のやり取りがほんわかかわいくて、すごくよかったですよ。

丑之助くん、5歳。これからずーっと歌舞伎役者なんだなぁ。

壱丁田

夕方、歌舞伎座ギャラリーの「第十三回 歌舞伎懐かし堂」を見に行く。

月に1回、古い舞台映像を見せてくれる催しで、今回は昭和57年3月に上演された『色彩間苅豆(いろもようちょっとかりまめ)かさね』。かさねを玉三郎、百姓与右衛門実は久保田金五郎に孝夫(今の仁左衛門)という、孝玉コンビでのかさねということで、ウキウキしながら出かけました。

見終わってつくづく思ったのは、当時から40年近くたった今も、ピークを維持し続けているふたりの偉大さでした。それにしてもね、金五郎ってのは、本当に嫌な奴なんですよ。こういう役を、仁左さまがやると、ホントに映えるのね。

銀座三越に寄って、弁当を買って帰宅。閉店30分ほど前に行ったら、どこもかしこも2割引き。それを狙って買いに来る人もたくさんいて、銀座といえども閉店間際のデパ地下ってこんな感じなんだなぁと初めて知る。夫の分(リクエストされていた、地雷也のてんむす)を買って、さらにもう一周していたら5割引きをするところも出てきたので、目に入った壱丁田のローストビーフ握りを買いました。

持ち歩き方が悪かったせいでお寿司がバラバラになってしまい、ふたを開けたら非常に寂しい見た目になってしまったのだけど、とりあえず乗っけ直したらまぁなんとか。酢飯の塩梅が良くて、とてもおいしかったです。地雷也のてんむすもおいしかったけど、ここ数日で、すえひろ、丸政、地雷也と3か所と食べた夫の感想は、すえひろのがいちばん好きかな、でした。

トマトとレタスのサラダ、乾燥湯葉の煮物。

お弁当

團菊祭五月大歌舞伎の昼の回を見に行ってきました。寿曽我対面、勧進帳、神明恵和合取組(め組の喧嘩)の3本。勧進帳って、えっ、来年だって絶対やるのに、今年もやっちゃうの? と思ったけど、何度見たっていいもんだから、まぁいいのか。

事前にいろんな人の感想を見ていたので、勧進帳は観る前からなんだかドキドキだったんですけど、楽しかったなー。海老蔵の弁慶、好きですよ(でも、本当は、十二代目の弁慶が一番好き)。菊之助さんの義経も、松緑さんの富樫もすごくよかったし、来年も同じ組み合わせでやってもらっていいなぁと思いました(多分、義経と富樫はもっと偉い人がやると思うんですが)。

対面は、朝比奈をやった歌昇さんにくぎ付け。イケメンなのに朝比奈なの? と思ったけど、違和感なくてビビった。梅枝さんの十郎は好きだなー。花道脇で見たかった。め組の喧嘩は、鳶と力士の意地の張り合いって話なので、五月場所をやっている今の時期にぴったりで、しかも菊五郎劇団がやるんだから、惜しみなく人がいっぱい出てきて見ごたえもたっぷり。倅役をやった亀三郎さん(6歳)がめっちゃ可愛くて、菊五郎劇団は御曹司がいっぱいいて賑やかだなーと思ってしまった。

お弁当は、昨日のうち豆カレーをご飯にかけて、チンした玉子をポン。腹八分目、冷房対策もきちんとしていったので、最後までしっかり観劇できました。4時間観劇できる体力を維持するのが、今後の人生の目標のひとつかもしれないです…。

夜の部で上演される「絵本牛若丸」の祝い幕の原画。ナウシカつながりで宮崎駿にお願いしたとのことで、やっぱりかわいいー。色紙サイズなのかなと思っていたら、結構大きかった。

府中について、ペコペコだったので、ついつい、ルパでじゃがいもが入ったパンを食べる。おなか具合のコントロールは、未だにうまくできない。

お弁当

四月大歌舞伎の夜の回に行ってきました。実盛物語、黒塚、二人夕霧の3本で、4月の幕が開いたばかりのころは、「こんな辛気臭い演目ばかり並べていたら空席が目立つのも仕方ない」みたいな記事が流れて、実際、前売りは芳しくなかったのでしょけど、私としては、見ごたえのある演目が並んで非常に満足感のある月だったと思います。

実盛物語は初見の場合、平家物語もあんまり知らないとなると、ちょっとストーリーを咀嚼するのは難しいところもあるんですが、話なんかよく知らなくても見どころの多い芝居ですし、なにより仁左衛門さんの実盛は素晴らしかった。様々な感情表現をシャープに演じられていて、圧巻だった。真秀くんも手塚太郎を頑張って演じていたし、馬も大活躍。次の黒塚も見ごたえがあった。いつもにくらべるとあっさりしているという劇評をよく見ましたが、そうかな。なんつーか、体の使い方がはんぱねーなーって思ってしまう。二人夕霧は初めて見る話でしたけど、面白かったです。ただ、この日は、3~4校ほど社会見学か修学旅行の一環かで学生さんが来ており、3A席は学生さんがたくさんでして、ああいう若い人に、こういう能天気な話って、どういう感じに伝わるんだろうなー、とは思ってしまった。どうでもいい話を面白く見せるのってすごく難しいし、受け取るほうもそれなりにスキルが要る。そこを必要以上に閉じないようにしつつ、きちんと空気を醸成していくのって、本当に大変なんだよな。とか、ごにょごにょ考えながら帰宅。

お弁当は、あるもので簡単に。たけのことセロリの炒めものに、いかなごのくぎ煮、ちくわきゅうりを添えて、目玉焼き。

無性に、アイスが食べたい気分だったので、夜遅くまで開いているスーパーに寄る。今年も、久保田のアイス、せっせと食べますよー。セコマの北海道メロンモナカもおいしかった。

お弁当

4月大歌舞伎の昼の回を見に行ってきました。平成代名残絵巻、新版歌祭文、寿栄藤末廣、御存 鈴ヶ森、の4本。このうち楽しみにしていたのは、吉右衛門と菊五郎でやる鈴ヶ森で、実際、やっぱり面白かった。吉右衛門の幡随院長兵衛はとにかくかっこいい。しびれた。

新版歌祭文は、通常、野崎村だけ上演することが多いのだけど、今回は座摩社も合わせて上演。すごく珍しいらしいけど、実際、私も見たのは初めてで、野崎村とはテイストがだいぶ違うので、少し面食らったくらい。それにしても、野崎村ってのはホントに悲しい話だよ。幕切れのお光の切なさと言ったらない。時蔵さんも情感たっぷりに演じていて、最後はぐっと来た。もう一度見たいなぁと思っていたら、5月26日の「古典芸能への招待」で放送するらしいので、嬉しいな。

お弁当ももちろん、タケノコで。穂先の煮物に粉山椒まぶし、タケノコと高菜の炒めもの、のらぼう菜の玉子とじ、いかなごのくぎ煮、玄米ご飯。

お弁当

三月大歌舞伎の昼の回を見に行ってきました。今回は、女鳴神、傀儡師、傾城反魂香の3本。

「女鳴神」は観るのは初めて。「鳴神」は好きだけど、それを男女逆にする話って、現在の感覚で言うと、あまりにも女をマヌケにしすぎていて、最後までちゃんと見れるだろうか…と少し心配だったんですが、さすがにそれなりに配慮があって、話の筋的には最後まで違和感なく見られました。でも、「鳴神」にしろ、「女鳴神」にしろ、最後はちょっと切ない…。結局のところは、純情を踏みにじられる話なので、どうも、アハハと笑い飛ばすのもなぁ、といつも思ってしまう。偉くてマヌケな奴は笑い飛ばしていいってことなのかもしれないけど、どうも、難しいね。

一番楽しみにしていた「傾城反魂香」ですが、たいていは「土佐将監閑居」だけ上演しますが、今回は「高嶋館・竹藪」も上演。「土佐将監閑居」だけ上演すると、ラストに急に出てくる狩野雅楽之助って誰や? となるけど、「高嶋館・竹藪」ではそれなりに活躍していて、ああなるほどと。トラも大活躍で楽しかったし。ただ、基本は、別々の話なので、逆に総花的な印象になってしまい、せっかくの白鸚の吃又なのに、そこだけに集中できなくてちょっともったいなかった気がする。猿之助のおとくはとってもよかったけど、全体的に折り目正しすぎって感じだったので、もうちょっと好きにやったらいいのに…と思ったり。でも、好きなお話なので、楽しかったです。

お弁当は、ありものを詰めて。玄米ご飯に、頂き物のいかなごのくぎ煮に白ごまふって。あとは、れんこんとわけぎのマリネサラダ、ゆで玉子、切り干し大根の煮物。

ネギピン

三月大歌舞伎の夜の回を見に行ってきました。

毎度おなじみの観劇弁当なんですが、ネギの青いところを刻んで炒めたものを冷蔵庫に入れていて、それを食べちゃわないとなーと、お弁当代わりに、ネギピンを作る。ウー・ウェンさんの『北京小麦粉料理』を見ながらも、もう、ほとんど自己流。

ピンの生地は、薄力粉100グラム、ぬるま湯60ml。なめらかになるまでしっかりこねたら、すぐ成型。生地は、40センチ×20センチにのばし、具を散らして巻いた後、半分に切り分けたので、2枚できました。

大量にネギを入れたので、ものすごいネギ臭でしたが(歌舞伎座のロビーで食べていいものだろうか…と思いつつ)、冷めてもおいしかったです。

夜の回は、盛綱陣屋、雷船頭、弁天娘女男白波の3本で、雷船頭と弁天娘…は、偶数日、奇数日で主要キャストが変わる趣向。特に、その影響が大きいのは、弁天娘…で、弁天小僧菊之助を、偶数日は猿之助、奇数日は幸四郎で上演するので、あえて、偶数日を狙って見に行ったのでした。猿之助ファンなので。

結論から言うと、猿之助の弁天小僧はよかったんですが、それ以上に、仁左衛門の盛綱陣屋が圧倒的でした。義太夫歌舞伎にもかかわらず心理劇なので、1階席で見るのが一番いいだろうなぁ、と思いながら双眼鏡でガン見。腕が疲れました。

盛綱陣屋には、勘太郎くん(中村勘九郎の長男)、眞秀くん(寺島しのぶの長男)も出演しており、場内は、両子役の見せ場になるたびに、大いに沸き立ったのでした。彼らが父親や祖父のようなお役をこなすようになるころには、恐らく私は70代。健康に気を付けて、コツコツ働きつつ、見続けるしかありませんな。うん、頑張ろう…。

お弁当

二月大歌舞伎の夜の回に行ってきました。吉右衛門さんの熊谷陣屋に、辰之助追善公演として松緑さん、仁左衛門さん、玉三郎さんでやる名月八幡祭と、1時間45分前後の演目が2本。なかなかの重量感です。一番のお楽しみはもちろん、にざたまが登場する名月八幡祭だけど、熊谷陣屋ももちろんよかった。正直に言うと、初めて見た熊谷陣屋の印象が強くて、これを上回るものはないんだけど、特に吉右衛門さんの熊谷は見るたびに雰囲気が違っているように感じられて、毎度面白く見る。今回の熊谷は、いつもよりも、ちょっと枯れた雰囲気。

名月八幡祭は、初めてみたのが、三津五郎さんの新助、福助さんの美代吉、歌昇(現 又五郎)さんの三次という組み合わせだったんだけど、これがほんとに面白かったので、また観たいなぁと思いつつ、幸いにもその後違う座組みで2回見る機会があったけど、今回の座組みが一番パーフェクトだなと思いました。玉三郎さんの美代吉が、もうとにかく自分の倫理観だけでその場しのぎで生きてる女を活写していて最高だし、三次ってそもそも顔がいい以外にいいところのない男(それを自覚しているところがなおタチが悪い)なので、仁左衛門さんはぴったり。仁左衛門さんが舞台でクズ男特有の甘ったれた態度を見せるたびに(チャーミング)、場内から忍び笑いが漏れていました。そこに、身の程知らずなことをやらかして狂ってしまう男を松緑さんが熱演。お昼のすし屋もそうでしたが、とても似合った役でした。面白かった。今後数年、このお芝居は、これ以上の組み合わせで見ることは、もうないだろうなぁ。

お弁当は当然、家にあるもので埋める。いか大根を炊いていたのでメインはそれ。キャベツを刻んだのと納豆の玉子焼き。ご飯の上には、穂紫蘇の塩漬け。デザートに、巻柿のクリームチーズサンド。いかに、大根に、納豆って、ふたを開けたらにおいそうだなぁと、内心申し訳ない気持ちでいましたが、案外そうでもなかった(気がする)。

お弁当

二月大歌舞伎の昼の回を見に行ってきました。「すし屋」「暗闇の丑松」「団子売」の3本。

すし屋は、尾上辰之助の追善(三十三回忌)でもあるので、音羽屋型です。よく考えると、すし屋は松島屋のばかり見ているので、今日のすし屋は新鮮でした。話の筋は同じなのに、違う芝居に見える…、不思議です。それにしても年末に南座で見たすし屋は絶品だったなぁ…と思いつつ、今回は今回で面白いのだから、歌舞伎って奥が深いなぁと思うのです。

暗闇の丑松は、とにかく菊五郎をたっぷり満喫出来て、楽しかった。正月の国立に行っていないので、菊五郎を見るの、久しぶりなんで嬉しい。ただ、個人的には好きなお芝居なんだけど、ところどころイラっとしてしまうのは、世代的なものなのでしょうか(いくら携帯のない時代の話とはいえ、ちょっと男に甘いというか、都合のいい話過ぎる気がするんですよね)。とはいえ、長谷川伸なのでなんというか全編が見どころのようなものだし(セリフがキレッキレ)、大詰(相生町の湯釜前)のサスペンスみのある演出は面白くて大好きなので、これからも定期的に上演してほしいなぁと思うわけです。松緑さんもいいけど、芝翫でも久しぶりに見たいなぁと、ひそかに希望。だいぶ前に、橋之助(今の芝翫)で見たのがすごく印象深いのです。

辛気臭い話の後に、明るい舞踊で締めて、バランスのいい座組でした。

お弁当は、乾燥湯葉を戻して刻んで、干しシイタケ、実山椒、鰹節と一緒に薄く炊いたものに、かまぼこを加えて、玉子でとじたものを、ご飯に乗っけたもの。見栄えは悪いけど、あっさりしていて、幕間弁当にはちょうどいい量でした。