日別アーカイブ: 2015/06/18

まい泉

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すごく素敵だから、機会があったらご覧になるといいですよ。先日アナンコレヤ展に行ったときに誰とはなしに言われたのが杉田明彦さんの展覧会。たまたまその場には、杉田さんのお兄さんがいらっしゃって、「うぉ、そうだ、そういえば、近々青山で展覧会やるんだったよ」と仰っていたので、なんとはなしに名前が出て、お兄さんがいて、しかも近々に展覧会まであるなんて偶然はそうそうあるもんじゃないよね…と思い、さっさと仕事を切り上げて仕事帰りに青山まで足を伸ばしてみたのでした。幸いなことに、夫もこの日は渋谷方面で仕事があってちょうどいい。これもありがたい偶然。もともと漆の器にはここ数年来興味があって、ぜひにひとつ買いたいと思っていたのですが、これぞと思うものがなく、ずっと宿題のようになっていたのも、出不精の私を青山まで運んだ理由かもしれません。

展覧会をやっていたのは、青山の裏通りにあるサンドリーズというお店でした。展覧会の会場はびっくりするくらい小さいスペースだったのですが、理由は、このお店、純粋にはうつわやさんではなく古美術品(古代オリエントとかそっち系)がメインだから。時折、お眼鏡にかなった作家のみ年に数回個展を開くそうで、その際は衝立を立ててお世辞にも広いと言えない店内をさらに半分に区切って展示するので、まぁほんとに狭い狭い。でも、その狭さが逆に、妙に落ち着く空間になっているような気もしました。店主の方は「わたし、好きな人としか一緒にやりたくないの」といい、「やりたくないことはやらないの」ともいい、杉田さんはいいわ、すごくいいわ。もう、わかいひとにもすごく人気なのよ。と仰っておられて、でも、これからもっと人気になるわよ、とも仰っておられましたが、その揺るぎない口調がご自身の審美眼への絶対的な自信にも感じられて、なんだか素敵だなぁと思ってしまった。わたしは、こういう女性をもうふたり存じ上げていて、いずれも素敵な方なのですが、彼女たちを見ていると、つよさ(単純な意味での強さじゃないよ)こそが美しさにつながるんだよなぁといつも思うのです。わたくしもつよくなりたいものだ…と改めて思ったのでした。

そういえば、「わかいひとにも人気なのよ」と言われたときに、ふと、違和感を感じたのですが、しばらく経ってから、ああそうか、わたしはもう「わかいひと」の側じゃないんだと気づいて、ちょっと驚く。いや自分のことを若いと思っていたわけじゃないんですが。わたしはこの10年中身(考え方、振る舞い)は何一つ変わっていないのですが(そして、洋服の趣味もあまり変わっていない)、でも見た目は確実に10年経っているんだよな…ということをつくづく実感させられたのでした。要は老けたってことなんですが、老けたら老けたなりのふるまいをせにゃならんのだろうなぁ…と思いつつも、どうふるまえばいいかよくわからん…とも思う。おばさんってのも、案外悩み多き年頃なのですね…。

全然そのつもりはなかったのですが、店内には杉田さんがいらっしゃっていて、しかも、お客は私たちだけだったので、色々お話しながら作品を見ることが出来たのも幸運でした(やはり実際にお作りになられた方とお話しできるのは嬉しいものです)。しかも、ドンピシャでほしい形と大きさのものがあって、これまた幸運。本当は、せっかくの個展なのだから、大きめのお皿(実際、とても素敵なのがいくつかありました)やお椀から検討すべきなのでしょうが、私は最初に買う塗り物はどうしても絶対に毎日使えるものにしたいと思っていました。だって、何年も使い込んで経年変化した美しさをみたいと思っていたから。毎日味噌汁を作る家じゃないから、お椀だと無理。お皿の方が、毎日さりげなく使えて、変化を楽しめるんじゃないかと思うのです。というわけで、小皿を2枚買いました。あと、何となく持ったときに手に吸い付くような感覚が心地よかったので、小ぶりの椀をひとつ。アフリカの土器を模して作ったそうで「Mali」という名前の椀でした(これは杉田さんの代表的な作品の一つのようでウェブサイトでも見られます)。

使い方も丁寧に教えて頂きましたが、ひとことでいうと、「普通の器とほぼ同じように使ってくれて大丈夫」とのことでした。ただし、高温と水に弱い点に注意。揚げたての天ぷらを直接置くのはNG。洗い桶に浸けっぱなしも厳禁。洗う時はごく普通に中性洗剤を使ってよく、洗い終わったら、水切り籠に置くんじゃなくて、さっと拭くこと。「意外と丈夫で、どうとでも使えますよ。こわれたら直しますから」と名刺を頂き、何となく心強い思いで持ち帰る。これから10年後、20年後が楽しみだなぁ。

青山通りをぶらぶらしつつ、十ン年ぶりにスパイラルに寄ってスパイラルマーケットであれこれみていたら、先週アナンコレヤ展ででお会いした方にばったり遭遇。そんなこともあるんやね…。で、いろいろおもろい話を伺いつつ、アナンさんの器を見る。個展で見るのと違って、ちゃんと「スパイラル」の器になっているのが、なんだかビックリだった。

最後に渋谷駅まで出て、駅ビルのまい泉。色んな人と話した興奮からか、調子に乗って大海老フライ3本の定食を注文。夫はいつものヒレカツ定食。エビフライはご覧の通りの巨大さで、とても美味しかったのですが、この大きさゆえ、いつまでも中身が凶器のように熱く、苦戦しながら平らげる。丸かじりで大きな大きなエビフライを食べるのは、結構大変なんだなぁと初めて知りました。

帰宅したのが21時ちょっと前だと思いますが、定時退社すると、都内だったら案外あれこれできるんだなぁ…と分かったのも、収穫のひとつでした。