下高井戸シネマで、『プレイタイム』を観てきました。
下高井戸シネマでは、現在「ジャック・タチ映画祭」を開催中で、8月4日~30日の期間中に6回に分けて13本のジャック・タチ監督作品を上演(うち1本は、娘ソフィーの監督作品)してくれるのですが、これはそのうちの1本。
ジャック・タチがどういう役者で監督なのかもほぼ知らず、『プレイタイム』がどんな話なのかも全く知らない状態のまま観に行きましたが(知っているのは、莫大な制作費をかけて作られたこと、そのため監督が破産したこと、公開当時は全く評判にならなかったこと…くらい)、何も知らずに観に行ってよかったです。とても面白かったです。好きなタイプの映画でした。
ただ、最初の40分ほどですかね、だいぶ眠気と戦いました。あちゃー、失敗したか…って思ったくらい絶望的に眠かったですね、最初は。
この映画、パンフレットなどでは、
近未来的な都市に就職の面接にやって来たユロ氏とアメリカ人観光客の娘バーバラのすれ違いや出会いをユーモアたっぷりに描く。
と、紹介されているのですが、本当にこれだけの話なんです。
一応、主役はユロさんとバーバラなんでしょうけど、自発的に動いてストーリーを動かしていくことはしないし、神の視点で俯瞰して語るという役割もなく、主役というよりは、私達(観客)のアバターという方がしっくりくる。主役は、エネルギッシュな時代や都市に住む人々であり、それらが作り上げる空気であって(なのだと思います)、2人は私達の代わりにそれを眺めたり、翻弄されたりしているだけなのでした。
前半のテンポがかなりゆったりしているのもあって、状況が分からん、話の先が読めん、タルいの3重苦で、最初は睡魔と闘いましたが(相当しんどかった)、ただ、ある程度話が呑み込めてくると、俄然面白くなってきます。夫は、「登場人物全員がイッセー尾形みたいな映画だな」と言っていましたが、それ聞いた時、あー、ホントやーと思いました。この説明でピンとくる人は、この『プレイタイム』は楽しんで観られる人だと思います。
個人的には、ストーリーもセリフもほとんどないのに、きちんと映画という形にまとめたところが圧巻でしたし、資金難で6回も制作を中断したにもかかわらずきちんと作りきったところもため息が出る。ロケかな…と思うシーンも沢山あるのですが、すべてセットだと知った時は、クラッとしましたね。そりゃぁ、お金かかります。どう考えても一般受けするはずない話なのに、完璧主義を貫くってどうなのよ…と思いましたが、でもカッコいいなぁ…とも思いました。『かぐや姫の物語』を見た時にも思いましたが、現実(採算)よりも業(作りたい欲)が先立つ人ってのは、もうそれだけで天才だと思います。
それにしても、この映画、2時間ちょいありまして、台詞はほとんどないのですが、とにかく1画面内の情報量が多くて、終始ガン見。しかも、気を抜いて観られるシーンがほとんどないので、観終わった後はかなりヘトヘトでした。でも、楽しかった。DVD(新世紀修復版)もあるようですが、ストーリーらしいストーリーがないので漫然と見ていると面白くない(と思う)ので、映画館で見るのがお勧めです。下高井戸シネマでは、8月28日~30日にも上演するそうですよ。購入順に整理券を発行するので、少し早めについたなど、時間に余裕があるなら先にチケットを買っておくことをお勧めします。
で、映画の話が長くなりましたが、少し早めに下高井戸へ行き、コーヒーハウスぽえむで晩ごはん代わりの軽食。夫はハムサンド、私はカレー。どちらも、手作り感あふれる味わいで、とてもおいしかったです。コーヒーもすっきりした味で美味しかった。